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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
――二ヶ月の猶予で、次期当主になった奴は、褒美になんでも願いを聞いてやろう。この忍月浩一、嘘は言わぬ。なんなら念書を書いてやろう。
孫らしくおねだりをしてみた俺に、ジジイ面して案外すんなりと頷いた。
俺と朱羽は「褒美」、そこに賭けているのだ。……恐らく俺から話し、この案件を了承した他の弟達も皆。
これは兄弟達で、裏で画策していた。
誰が勝っても、兄弟達と共に自由になることを。
誰の会社も潰させはしないし、誰のも奪わせない――。
……そのために、俺は月代さんに頼み込んだんだ。
俺達の家の事情だというのに、会社の命運を共にして貰えないかと。
月代さんが忍月コーポレーションを出て独立したのに、忍月コーポレーションに吸収して貰えないかと。
そうでなければ俺は、堂々とカバがいるこの会社に朱羽を送り込めなかったから。
月代さんにはすべてを話して、土下座した。
可愛い弟の恋を実らすために、俺達が自由になるために。
そして向島の馬鹿から、三上を守るために。
全力で月代さんの会社を守るから、OSHIZUKIビルに来てくれと。
月代さんは、昔と変わらない笑みで言った。
――ムーンの名前は残してくれよ。
兄弟で決めた、勝者は誰だろうと構わぬ、出来レース。
俺の恩人とその会社を巻き込みながら、弟達と監視人はそれぞれの会社に配置されて、二ヶ月間の猶予を与えられた。
弟達は、誰もが忍月の犠牲になった過去がある。
OSHIZUKIビルに弟達がやってきて、二ヶ月間だけが俺の名の下に、初めてジジイ達忍月が手出しできねぇ、仮初めの自由が与えられるんだ。
朱羽は、沙紀とカバを認めてくれることを願いに入れていた。それを含めた自由を願い、朱羽なりに意気込んでいたが、シークレットムーンの危機に巻き込まれてしまった。
賭けのために業績を上げようとしていたはずの朱羽は、今では一社員としてシークレットムーンに身を投じている。
カバだけではない。結城ら社員に、心を見せるように柔らかく笑う朱羽を見ていて、結城と冗談を言い合う朱羽を見ていて。俺と沙紀は内心喜んでいたんだ。
ようやく朱羽に、感情が出たと。