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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
***
リビング――。
ふたりバスローブ姿で窓の前に座っている。
朱羽の腕に身体を凭れさせるようにして、朱羽の膝の上で横抱きされているあたしは、朱羽と共に、窓から見える光景に目を細めていた。
――朱羽、夜明けを見よう。
カーテンを開け放った窓の奥、漆黒の闇夜が明け、葛西臨海公園の遠景を朝日の暖色が染め、天陽が神々しく輝く様は、なんとエネルギーに満ちた活力を見せるのか。
生命の燃える様を見た気がして、感動した。
"戦うことに不安がないか"と問われれば、ないと断言は出来ない。朱羽が相手にしているものは、あたしが想像出来ない世界にいるからだ。
"会社や社員、友達に愛情がないのか"と問われれば、それら以上にすぐに助けたい愛するひとがいるのだと、平謝りをするしかない。
今、朱羽が茨に身を巻かれる原因となった、苦難の道を選んだ理由が、朱羽があたしに会いに来るためだというのなら、あたしもまたどんなに苦難の道であろうとも、朱羽を……朱羽との愛を守りたいのだ。
恋に走る愚かな女だと罵られても構わない。
朱羽と再会するまで、あたしがそんな女だったとは思いもしなかった。
今まで愛を注いだ会社以上に、社長が築き上げたあたしが帰る大切な場所以上に、あたしは愛する存在を助けたいのだ。
財閥というものがどんなものかはあたしにはわからない。
だけど向島専務と杏奈の一件で、向島専務は次期当主の座を手に入れた代償に優しさを捨て、実の妹を虐げるサディストに変貌した。杏奈が恋を諦めるほどの脅威が潜むものであることは、なんとなくでもわかる。
あたしは朱羽を、向島専務のような生き方をさせたくない。たとえ身分違いだと罵られようと、あたしは杏奈のように朱羽の傍から離れたくない。
ただ――。
結城と衣里を思うと、たまらない気持ちになる。
今会社が大変なのになにを突然言い出すかと、あたしが彼らの立場なら、そう言うはずだ。
だからせめて、結城が社長になったのを見届け、新しいシークレットムーンになるのを確認してから退職しようと思うんだ。
朱羽に言いたくないことを言わせてしまった感はあるが、朱羽は恐らく、すべての事情をあたしに語っていない気がする。
きっとまだまだ大変なことがあるのだろう。