この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon

「それと……、渉さんが俺の狂った母親を入れた病院。渉さんも知らないうちに勝手に転院されて、渉さんが行方を掴んだ時には、母は既に死んでいたそうだ」
「そんな……っ」
「ろくに食事も与えられず、最期には俺の名前を呼んでいたのだと、渉さんが金を掴ませたら医者はそう語ったらしい」
「それは、現当主の仕業?」
「義母だ。彼女は愛人に容赦ないと、渉さんからも聞いていた。渉さんの母親も彼女に殺されたらしい。渉さんの目の前で」
「目の前で殺された、の?」
全身から血の気が引く。
殺人を犯した人間はのうのうと生きていれるのは、財閥だからなのだろうか。財閥とは、そんなに罪を隠蔽できる場所なのだろうか。
明朗で沙紀さんにべた惚れの宮坂専務からは、そんな過去があったように思えない。専務は本家で恵まれた生活をしていたように思えていたから。
「どんな方法で殺されたのかはわからない。渉さんが詳細を濁すから。だけど逆に言えば、俺に言えないほどの残虐な方法だったんだろう。ただ単にナイフでぐさりなどではなく。……俺の母さんだって、死因は餓死だという。この豊かな日本でっ」
震える朱羽の手を、反対の手で包むと、その手をさらに朱羽が外側から包み込んだ。力が入っていた。
「あいつらが欲しいのは、渉さんや俺の中にある死んだ父親の血だけだ。だったらすべての血を抜き取って差し出して終わりにしたいよ!!」
「朱羽……」
垣間見える朱羽の憤怒に、涙が出そうになる。
「渉さんも相当に苦労しているんだ。それを沙紀さんと月代社長が救った。そして俺の生きる力をくれたのは、渉さんと……あなただ」
朱羽はあたしを胸の中に掻き入れた。

