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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon

「朱羽はなんでそこまで忍月を嫌うの?」
「俺、渉さんと初めて会った時、そこには初めて会うじいさんと義母も居て。勝手に忍月の次期当主の子供だと認知したことを告げられた。俺には母がいるのに、勝手に新しい母だとかいう女を作られて、そんな理不尽なことを、"妾腹なのに忍月に入ることを光栄と思え"と、じいさんに言われてさ、あまりに一方的で腹をたてて……心臓発作を起こしたんだ」
朱羽も繋げた手を、ぎゅっと握ってくる。
「発作で苦しくてたまらなくて。床に倒れた俺は、薄く目を開いて手を伸ばしたんだ。まだ死にたくない、まだ生きて……行方をくらましたあなたに一度でもいいから会いたい。死ぬ一歩手前で、あなたを思い出して。どうしても死にたくない、助けてくれと必死に願った」
朱羽はため息をついて言った。
「その手を掴んで引っ張り上げてくれたのは、渉さんだけだった。今でも助けを求めた祖父と義母の冷たい目は記憶に残っている。そしてこう話していたのも」
"父親譲りで身体が弱いなら、使いものにならない"
「そして祖父は、狼狽して騒ぐ他の兄達を牽制して言った」
"こんなことくらいで、動じるな"
「酷い……、なにそれ」
"こんなこと"
発作で苦しんでいるのが、こんなこと!?
「ふふ、一緒に暮らしていた渉さんがされたことに比べれば、まだまだ可愛いものだろうけれど、さすがに死にそうになっている奴が居る時に言う台詞じゃないよね。それを一喝したのが、渉さんだった」
"あなたが俺の弟として勝手に決めた。ならば俺は、兄としてすべきことをします"
「渉さんも初めてその場で、弟達だと紹介されたみたいでね。赤の他人同然なのに、渉さんは病院に搬送する時も、ひとりでずっと付き添ってくれたんだ。初めて会う俺を心底心配そうに、ずっと手を握っていてくれた。同情して欲しかったわけじゃないけど、あの眼差しは俺、絶対忘れない。あれで俺は、渉さんだけを受け入れた。……俺は兄は、渉さんだけしか認めない」
朱羽が他の兄達をOSHIZUKIビルで声をかけようとしていないのは、これが尾を引いているのか。

