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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon

なんて言うの?
朱羽が忍月財閥の御曹司で結婚させられそうになっているから、あたしは朱羽を助けたいからって?
朱羽の秘密を暴露した上に、朱羽のせいみたいなそんな言い方をしたくはない。だけど長年の付き合いがある結城に、誤魔化しはきかない。
唇を噛んでいると、あたしの横に朱羽が座った。
背筋を正して、内ポケットから同じように、退職願と書かれた封筒を結城に差し出す。
「すみません、結城さん。すべて、俺の事情です。俺が彼女を巻き込みました。辞めたくないといっていた彼女を辞めさせようとしたのは俺です」
「違う、朱羽、それは違う!! 結城、聞かないで!!」
「辞めるのは俺ひとりです。彼女のは破棄して下さい。彼女に関しては、すべてはなかったことに」
朱羽は厳しい面持ちのまま――。
「やだ、違う、あたしも辞める。辞めて朱羽を助けたいの。結城、あたしも辞めるの」
あたしは必死になって言った。
「ごめん。俺は……自惚れすぎていた。あなたの幸せを俺が作ってやると。だけど違う。あなたの幸せは、ここにある。あなたの家族は、ここに。あなたを求める家族がここにいるのに、俺がそれを壊すわけにはいかない」
「朱羽、なにを言ってるのよ、朱羽!!」
あたしは泣いて彼に縋るが、朱羽の表情は変わらない。
「結城さん。彼女をよろしくお願いします」
そう朱羽が言って、立ち上がろうとした時。
「香月。歯を食いしばれ!!」
胸ぐら掴んだ結城が、朱羽の頬に拳を入れた。
そして朱羽が乱暴に床に放られる。
「ちょっ、結城!! 朱羽、大丈夫!?」
朱羽は口を切ったのか、口端から血が流れていた。
「お前の、鹿沼に対する愛情はそんな程度だったのか? そんな簡単に俺に託せられるものなのか?」
「……っ」
「俺、こいつを泣かせるなって言ったよな!? なのに、なんで泣かせているんだよ、お前は!!」
結城は朱羽に馬乗りになった。
「お前は俺に約束しただろ!? こんな簡単に破るような、そんな意志の弱い男だったのか、お前は!!」
拳が振るわれるのを、あたしも皆も必死に止めた。

