この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「俺、漢字弱いのに!!」
あたしだってそうだよ、結城。
魚介類を表わす漢字で、話すに値する人間かどうかを試されるのは癪だけれど、だけどあたしはやり抜けたい。
頑張ろう、皆!!
「開始!!」
よし、昨日(今朝)、朱羽と行ったスーパーを思い出せ!!
そこからあたしの自問自答が始まる。
あのスーパーでなんの魚を買った?
……競争率が高い"鮭(さけ)"だよ。
他に思い出せるのは?
たらこ。……ひらがなだよ。
あ、つまみにあった。
"鱈(たら)"
……鱈のお寿司なんて聞いたことないけど。
定番のマグロは!?
「……思い出せん」
マグロはマグロだ。あたしにとってあの赤肉の魚は、ひらがなかカタカナだ。
あたしを含め皆がうんうん唸る中、朱羽と衣里はさらさらと書いて提出。
「はい、おふたり正解。13個ずつなんて凄いわね~」
板前さんが作った13種の寿司を、おりに入れて貰ったらしい。
あたしの横でむしゃむしゃと食べている。
「……くそっ、俺の横で食うなよ、香月!」
耐えきれなかったのは、あたしと反対側に座る結城だった。
「すみません、お腹すいていたもので」
「俺もすいているんだよ!!」
「……参ったな、こんなに魚の"味"がいいのに」
「もう黙れよ!」
……ん?
なんで味を強調した?
……あじ?
――参ったな、こんなに魚の"味"がいいのに。
魚のアジって、魚編に参る?
よくわからなかったけど、朱羽がわざと口にしたのは意味があると信じて、"鯵(あじ)"と書いた。
次に杏奈が立ち上がり、名取川文乃のところに赴いた。
「はい、九つ、おめでとう。画数多いのばかり凄いわね」
画数多い魚介類ってなにかも思い浮かばない。
魚へん、魚へん……。
「こぉら、木島。花が生えてるよ」
「呆けてないで!」
衣里と杏奈の声。
「思い浮かばないっす!」
なんで衣里は、花が生えるなんて突然言い出したんだろう。
呆けるという杏奈の表現もなにかしっくりこない。
魚へんに、花?
ほうけてないで、ほうけ……ほっけ?
"𩸽[魚へんに花](ほっけ)"、と書いた。
正解かどうかもわからない。
ただ意味ありげな同僚達の会話を信じるだけだ。