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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 ひとり、またひとりと社員が名取川文乃の元に行くが、七つ以上の正解者は出ないらしい。二、三個で寿司をゲットしているのは、お腹がすいていたためか。

 そりゃあそうだよ、だってネコ探したりネコを追いかけたり、かなり身体動かしたもの。お風呂入って大騒ぎして、さらにお腹減ったもの。

 キュウリとなすと大根のお新香をぽりぽり食べ、お吸い物を飲んでも、空腹は満たされない。

 名取川文乃の声が聞こえる。

「サケはなくなりました。書かれていても正解ではありますが、寿司はありませんので、あしからず」

 皆がすぐ思い浮かべただろう漢字は、最初からちょびっとしかない上に競争率が高く、あたしは鮭を食べ損なった。

「イワシもなくなりました」

 ……イワシ!! あたしが知らない漢字を、皆は知っていたらしい。


 メジャーな魚なのに、いい加減に買い物して手抜き料理ばかりしているから、魚の正しい漢字もわからない。

 そのくせに、隣のアメリカ帰りのイケメンは、漢字もご存知とは。

 ちらりとおりを見る限りにおいて、朱羽は何の魚を書いたのかよくわからない。


「ぎょぎょぎょ……」


  おかしな声を出す木島くんも苦戦しているようだ。


 これは、小出しにしないと、お寿司を食べられないか?

 だけど…どさっと出して、正解したい……あたしのちっぽけなプライドが、小出しにすることを許さない。

 寿司を食べたいためではなく、あたしはこの課題を一気にクリアしたいのだ。

「ああくそっ」

 苛立たしげな声を出した結城が憤然と並び、驚いて動向を見守っていたら、名取川文乃にOKを貰うと、板前さんは大きなカニを取り出し、奴はカニ寿司をひとつだけ貰ってきたようだ。

「横で食べてる香月みたら、無性に食べたくなったんだよ!!」

 見ているとあたしも食べたくなったが、同時にカニの漢字が思い浮かばないあたしは、結城に負けたと内心脱力する。
 
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