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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
母屋に入った時、彼女が会社と朱羽を救うキーマンになるとは思ったけれど、寿司から端を発したあたしの発言は、彼女を取り込みたいから社員を宣伝したわけではない。
ただ単に、わかって貰いたかっただけだ。
それがあまりわかって貰えてなさそうで、ため息をつきながら、気分転換に寿司でも食べようと箸を掴んだ。
そしてあたしは、違和感を感じた。
「……ん?」
箸の下は、真っ白いブツばかり。
シャリだ。ご飯だけが、あっちこっちに散乱していた。
「え? 魚は? 蟹は? トロは?」
騒ぐあたしに、隣の朱羽が言った。
「……陽菜、聞いてなかったんだ?」
心底哀れむような顔で。
「ごめん、俺の……皆にわけちゃってて」
「え?」
朱羽があたしの後ろを指さした。
すると――。
「みゃ~」
ネコが!!
朱羽の移り香を纏う忌まわしき、純白のふさふさネコが!!
「あたしの魚~!!」
ネコの傍に置かれていたのは、ご飯粒まみれの、寿司ではなく刺身となった……なにかから剥ぎ取られた魚達。それは多分、いやきっと――。
「あたし1個しか食べてないんだよ!? この泥棒猫~っ!!」
「みゃ~っ、みゃ~っ」
泥棒猫は、じたばたじたばたもがいていた。
断じてあたしがなにかをしたとか、超能力や呪いの力でネコをどうこうしたわけではない。
「え、なに?」
「……わさびを、思い切り食べちゃったみたいでさ」
気の毒そうな顔をした朱羽が、開きになったネコを座らせてみせると、ネコは毛という毛を逆立てて、あたしから奪った魚にフーッフーッと怒り、あろうことか爪をたてた手であたしの魚を"たたき"にし、そして畳ごとがりがりと爪を研ぐようにして、引き千切り始めたのだ。
「NO~っ!!」
気分はムンクの叫び。
あたしのお魚たちが!!
見れば他の皆は既に食べ終えたらしく、お皿は空っぽで。皆のために寿司をゲットしたあたしだけが、1個だけしか食べられていないこの状況。
「あたしのお寿司~っ!!」
「「だから言ってたのに……」」
とてもとても同情めいた眼差しを、あたしは浴びる羽目に。