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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 みゃーみゃーうるさいネコは、なにかくるくると回っておかしな行動をしながら、あたしの尻に噛みついた。

 こんなお行儀が悪いのは、飼い主が猫かわいがりしているせいだ。

 名取川文乃がいないことをいいことに、完全八つ当たり。

「いったっ!! あったま来た~!! しつけてやるっ!!」

「みゃ~」

 あたしはネコを追いかける。ネコはよろよろと逃げる。

「捕まえた!! この猫ババネコ!!」

「フーッフーッ!!」

 捕まえればひっかかれ、頭を叩いて怒ると、長い尻尾で顔をぴしぴしと叩いてくる。

「おとなしくしなさいっ!! ――お手っ」

「フーッ!!」


「陽菜、それ……犬だから。あのお転婆ネコは、しつけられないよ、猫の首に鈴をつけるようなもんだ」

「猫の歯に蚤ともいいますね」

「わからないっす、わからないっす! ネコネコ言うならあっちのネコを助けましょうよ、主任大変そうです」

「ああ、陽菜は大丈夫。木島、ほっとけほっとけ。皿嘗(な)めた猫が科を負うよ?」

「杏奈ひとつわかった!! 上手の猫が爪を隠す、知識豊富さを自慢しない、香月ちゃんと真下ちゃんのことだよね!」

「俺、さっぱりわからん。なんだよ、真下と香月だけではなく三上まで、ネコ語喋りやがって」


 バタバタと畳を駆けながら、あたしは叫んだ。


「皆もまったり話し合ってないで、手伝ってよ!! 浴衣じゃ追いかけづらいのよ、猫の手も借りたいわ!!」

「みゃ~」

「お前じゃないの!! なにその余裕!!」


 ……あたしとネコの戦いは、しばし続いた。




*****


・猫の首に鈴をつける…いざ実行となると、引き受け手のない至難なこと

・猫の歯に蚤…不確実なこと、めったに成功しないこと

・皿嘗(な)めた猫が科を負う…悪事をはたらいた主犯が罪を逃れ、悪事に少しだけ関係した小者が罰せられること

・上手の猫が爪を隠す…本当に能力のある優れた者は、その力を自慢したり、見せびらかしたりはしないということ

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