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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「なあ鹿沼、帛紗ってなんだ?」
結城がこっそりと聞いてきた。衣里に聞かないところ、あたしの方が自分に近いと思っているのか。
「小さい風呂敷みたいな奴だよ。ハンカチ代わりの」
「そんなのあったっけか?」
結城の記憶も曖昧らしい。
全員が懐に入れ終わった後、先ほどの給仕が来た。
「ご案内致します」
表情があまりない給仕は、朱羽や衣里が尋ねても、お茶のことはわからないらしい。もしかしてわかっているかもしれないが、口を開きそうにない。
「陽菜、作法とまず言われたからには」
あたしの横で朱羽は堅い声を出した。
「まずは流派を特定するのが先だ」
「あたし、マナー教室でやったのしか知らないよ。朱羽は全部知ってるの?」
「忍月に、俺も昔マナー講座みたいな帝王学をやらされたんた。三千家はわかるけど、副社長がわざわざ名取川文乃に稽古をして貰っても、懐柔できなかったということが、副社長がわかっていない……名取川文乃の茶の道に反していたからのように思えるんだ」
「だったら、その茶道がどんな道なのかわからなければ、副社長の二の舞ってこと?」
「ああ」
朱羽は堅い顔をして言った。
「ひとつ気になるのは、あのお辞儀の仕方……」
朱羽は目を細めた。
「もしかするとヒントを出しているのかもしれないけど、帛紗を出さないあたり、攪乱させる気かもしれない。……真下さん」
前に歩いていた衣里が振り返る。
「あなたは茶道に強いですか?」
「強いわけでもないけど、一応は有名どころは全部やらされてる」
さすがは元お嬢。あ、今もお嬢なのか。