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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「ここの茶道はご存知で?」
「いやまったく。香月は?」
「俺もわかりません。帛紗もないから、夫人の歩き方やお茶の点て方などで判断するしか」
「総合的に、違いがわかっているかのテストなのかしら」
「恐らくは」
……そんなのこのふたりしか知らないよ。
杏奈を始め、他社員も茶道はまったく知識がないと言う。
「……香月の表情、予想はたてているんだ?」
「一応は。だけどそれは俺もあまりよく知りません。婦女もそうなのかとか、明確なところは」
「ああ、あのお辞儀の仕方?」
「ということは真下さんも?」
「私はあれだけはやっていなくて、知識だけなの。細かい違いとはわからない。もし名取川文乃がわざとやってきたり、隠したりしたのだったら、お手上げ」
「……あれも裏表あるでしょう。まずは裏か表かを確定します。真下さん、俺の隣で座ってくれますか?」
「OK。目で合図し合おう」
ただ茶を飲むだけのものだと思っていたあたしは、呆然だ。
シークレットムーンが誇る知識人が断定出来ないのなら、あたしはなにも出来ない。それが悔しいあたしとしては、昔を思い出しながらなにかヒントを見つけて上げたいと思う。
お腹がきゅるきゅる鳴ってしまった。
「あはは、陽菜。茶菓子で誤魔化しな」
「うん。美味しいお茶と美味しいお菓子で……」
「陽菜、茶菓子は先に食べきるのが基本だよ。そう習ったでしょ。覚えてない? お腹すかせた結城ががっついて一気に食べて喉詰まらせたの」
「……お前、忘れろよ、恥ずかしい」
思い出した。
あれは……水分を吸収するような、干菓子だった。当然お茶がくるものだと食べた結城と、お茶と一緒に食べようととっておいたあたしは、講師と衣里に駄目出しされたのだった。
ふぅ、いけないいけない。
茶道のさの字も覚えていないけれど、とにかく朱羽からの"伝言ゲーム"、頑張らなきゃ。