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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「なあ、社……親父は、鹿沼がいることで、名取川文乃が協力してくれるという結末、見抜いていたのか?」
「そりゃあ信じているよ。どんな時でも部下がちゃんとやってくれると、信じられなきゃ社長とは言えないよ、むっちゃん」
「むっちゃん言うなって!!」
「個人の能力だけで考えては駄目さ、むっちゃん。それでいけば、"働かざるもの食うべからず"だっけか? その考えは忍月コーポレーションと同じになる。実力や能力は付加価値として考えるんだ。俺達は人間を相手にしている。心を求めている相手にまず見ないといけないのは、こちらの精神的な特性。そして複数になることの化学反応、化学変化。求めるところは能力ではなく、チームワークがなせる"限界突破"だ」
「限界突破……」
「ひとりだけでは限界がある。その限界を打ち破るのが他人、他の社員だ。だから化学変化をみろ、――睦月」
結城の名前が、やけに重く感じた。
……それは結城に押しつけてしまった、社長としての重みなんだろうか。
「……わかった」
結城は真摯な顔をして頷いた。
さすがはカリスマ社長。
あたし、思うんだ。
名取川文乃が協力的になったのは、あたし達がネコを見つけたからではないのではと。
社長が先に電話をかけていたから、初めて会った瞬間から、テストが始まっていたのではないかと。
社長が電話をかけてくれていなかったら、あたし達は門前払いをくらった気がするのだ。
"限界突破"
動けない社長とあたし達の化学反応が、化学変化が、きっと名取川文乃を動かす力となった。