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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「今度、あなたがバイトしていたバルガーに行ってみようか」
レジが終わった買い物袋を朱羽は持ち上げた。
特に意識せずに、朱羽はいつも荷物を持とうとしてくれる。せめてと思い、つまみや、夜食代わりのスイーツが入った袋をあたしは奪い取った。
「あそこのバルガー小さいし、こことなにも変わらないよ?」
朱羽はふっと笑った。
ありがとうございましたと言う店員の声を背後に聞きながら、自動ドアを開けると、ぴゅぅっとこちら側に流れ込んできた夜風が、朱羽の黒髪を揺らす。
「同じわけないだろう? 俺があなたに恋をした……特別な場所だ」
そう言われてしまうと、あたしは照れてなにも言えなくなる。
あたしがあのバルガーにバイトしていなかったら、こうして隣に朱羽が立つことはありえなかっただろう。
せいぜい街の中で、すれ違っているくらいが関の山。
顔も知らない美貌の男を振り向かせるだけの要素は、あたしには、なにもないのだから。
「……あなたがあのバルガーでバイトしていなくても、俺はきっとあなたに巡り会っていたと思うよ。……その時も、必然的に出会っている」
「え?」
「あなたと俺の関係に、"もしも"などという偶然性はない。あるのは、時と場所が違うだけの出会い。俺はきっと……別な場所であなたに恋をしていたと思うよ?」
「朱羽……」
「運命という言葉は好きではないけれど、俺は、魂の伴侶であるあなたを探し出すよ」
朱羽が微笑みながら、あたしの頭を撫でた。