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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「あなた以外の女性に、揺れたこともなかった。俺の身体はもう、あなたにしか反応しないように作られているんだよ」
朱羽がそうした純粋なことを言ってくれても、あたしは沢山の男と関係した身の上だ。冗談ではないほど、あたしの身体は穢れきっている。
だから、あたしも同じと言えずにごめんと言うと、朱羽は笑った。
「別の場所で出会うのなら、きっとあなたは満月の秘密なんてなかった。あなたが満月の秘密を持っていたから、あなたはあのバルガーにいて、そして俺は……あなたに男にして貰ったんだ。そういう過程がない別ルートも、どんなものだろうと面白いとは思うけどね。……俺にはそんな程度だ。あなたが穢れてるなんて思ったことは、今までで一度もないし、これからもそう思うことはない。……前にも言ったと思うけど」
嬉しい。
凄く嬉しい。
どんな環境で育っていても、必ずその人生の先に朱羽が居てくれるのなら、あたし幸福だ。
散々と満月のことで悩んで苦しんだけど、それがあったから朱羽と巡り会った奇跡に感謝したい。
「っくしょん」
なんだか夜風が身に染みて、くしゃみが二回出てしまう。
「寒い?」
「ちょっとね。風邪を引いているわけじゃ……って、え?」
朱羽が裾の長いコートを開けて、その中にあたしを入れコートで包んでくれた。
「これで俺も温かい」
後ろから抱きしめてくる朱羽の息が、あたしの首筋にかかる。
「今夜あなたを抱けない分、少しでもあなたの熱と匂いを感じさせて。これで……我慢するから」
あたしも朱羽の熱と匂いを感じながら、夜道、しばし抱き合っていた。
……それは、まるで嵐の前の静けさ――。
忍月財閥の後継者である忍月朱羽か、シークレットムーンの香月朱羽か。
朱羽を巡る嵐が、すぐ傍まで来ていたのだった。