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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
***
月曜日、株主総会当日――。
会場はホテルの中広間を借りている。
前日日曜日に最終確認した、業績報告ら資料を病室で印刷してホチキスで止め、朱羽がパパっとスライド用のPowerPointを作ってくれた。
いつもシークレットムーンの株主総会は、株主と言っても大手の企業の社長が数人出るくらいで、後の多くは、欠席(総会の議長などに議決権行使を委任)という形で進められていたようだ。
こんなに月代社長を慕う宮坂専務なら、毎回総会に出席していてもよさそうなのに、彼曰く「なにもないと安心しきっているから」出席しないのだそうだ。というか、出席メンバーに、宮坂専務が顔合わせたくない、専務に媚びる大企業の社長が来ているそうで、どうやら逃げ回ってるらしい。
うちから出席しているのは、重役と社長くらいで、たまにあたしや衣里が受付やお茶出しをしたこともあったが、それは近年は千絵ちゃんに任せていた。今回のお茶出しは、ホテルの従業員さんがしてくれるということで、あたし達は受付のみの仕事となった。
今回は専務は株主席に座るため、うちの重役が来てくれたとしても、会場で、実質結城は孤独感を味わうだろう。
――もしかすると、重役達来ねぇかもしれないぞ?
シークレットムーンの定款において、株主総会での司会進行役の議長は、社長と定められている。もしも社長が議長を出来ない状態……つまり今のような状況においては、取締役となるらしい。
だがもしもその取締役がいなければ、株主総会で出席株主のうちから議長を選出することになるが、過半数の賛成が必要となる。
――そしたら俺が立候補してやる。なれるかどうかはわからんが、少しでも結城の傍に居られた方が、お前も安心するだろう。
――ありがとうございます!!
――結城のためではなくても、議長は権限があるからな。逆に言えば、副社長一派にやらせたくねぇわ。
ちなみに、議長の権限というのは、審議の方法、株主の発言時期を指定するもの。発言者を指定し、発言時間、質問数などを制限するもの。回答者を指名するもの。質問の打ち切りをするものなどだ。
議長に専務がなって貰えれば、こんなに心強いことはない。