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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
それぞれの思惑を胸に秘めながら、病院から十五分ほどの距離にあるホテルにて、午後一時から開催された株主総会。
いつも欠席がある株主が、全員出席するという事態に、あたしは内心驚いた。
この意味は、出席をしてくれるようにと頭を下げに回った結城へ、好感を持って貰えた結果だと思いたい。
どうかよくない前兆ではないようにと、扉の奥で開かれる総会に、祈るような心地で願わずにはいられなかった。
しかし、受付嬢としてこうやって株主を見ていると、色々観察出来る。
どんな経緯でうちの株を持ったのかは知らないけれど、平凡な一般人のようなひともいれば、ヤクザみたいな怖い顔のひともいる。
気難しそうなひともいれば、欠伸ばっかりしてやる気がなさそうなひともいる。
それでも株主である限り、結城を社長として承認する一票を持つ、とてもありがたいひと達なのだから、細心の注意を払って受付をし、朱羽や木島くんら男性社員が扉の奥の席に案内する。
「よーし、株主、全員来たね」
受付任務完了。
腕時計は午後一時を回っている。閉められた扉の奥では、もう臨時総会が始まっている。あたし達がこの後に出来るのは、関係者としての監督ぶりながら、ちらちらと中を見ることぐらいだ。
結城を社長と決める採決に、あたし達は無力だ。
「ねぇ、陽菜……」
不意に衣里が呟いた。
「私達、株主の顔って知らないよね」
「うん。今まで全員出席もなければ、そんな時にあたし達が受付したことなかったものね」
「………。もしもだよ、もしも……」
衣里は憂慮な表情を作った。
「副社長の手先が、株主装ってきていたら、どうしよう」
「ええええ!? それやられたら、顔がわからないあたし達には、止めようないじゃん!」
「陽菜のところにヤクザみたいな顔に傷したひと来たよね?」
「来たけど、でも凄く腰が低かったよ? ヤクザってもっと威張り腐ってガンつけるものじゃないの?」
「そんなのわからないじゃない。今だったらインテリヤクザなんていう名称もあるんだから、もしかすると気難しそうな一般人装っているかもしれないし!」
「あたしのところに、気難しそうな男のひと来たよ!?」
思い当たるひと達ばかりで、悲鳴のような声を出してしまう。
「……総会屋っていうの来てたりして」