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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

衣里のマンションはデザイナーズマンションで、朱羽のマンションには敵わないが、あたしのボロマンションよりはかなり上位な、白と赤が可愛い建物だ。
ここは女性のみという規則はないらしいが、この外観の建物に住もうという男性はいないらしく、実質女性のマンションになっているらしいことを、昔に衣里から聞いた。
朱羽が衣里の集合の郵便受けを見つけ、金庫のようにダイヤル式の鍵がかかっているため、投函する隙間から覗くと、郵便物はちゃんとあるらしい。
「ということは外出?」
「ねぇ、鹿沼ちゃん。真下ちゃんは新聞とってるの?」
「うん、経済新聞を。そうか、ドアのところに新聞があるかないかで確かめればいいのか。郵便取り忘れても、毎日欠かさず衣里なら新聞見るから」
七階、勿論エレベーターを使って赴いた。真下と書かれた表札のドアの前に立ったが、新聞受け新聞は挟まっておらず、奥に落とされたのかと、視力2.0を自慢する木島くんが覗いて見たが、落ちたような形跡はなかったようだ。
「じゃあ衣里、いるんだね」
だがチャイムを押してもノックをしても応答がない。
「衣里、居る!? 衣里っ!」
まるで音沙汰もなく。
衣里に持病があるとは聞いたことはないが、突発性の心臓とか脳とかの病気で倒れていたりしていないか。
命に別状はないわよね!?
余計に不慮の事態に焦り、杏奈とドンドンと拳でドアを叩いた。
「衣里、開けて! 衣里!!」
「真下ちゃん!」
しかしシーンと静まりかえったまま。
向こうでカタリとも音が聞こえない。
「いるのかな、いないのかな……」
「これ、管理人さんに開けて貰わないと駄目かな」
「真下さん、何事もなければいいっすね」
「俺、管理人に――」
「真下さんなら、お留守ですよ?」
あたし達の物音に気づいて、隣のドアから子犬を抱いた女性が出てきた。

