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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「え、でも新聞……」
「しばらく留守にするから、新聞を取っておいてくれと言われて、私が預かってますけど?」
子犬が同調したように、クーンと小さく鳴く。
……すごく怖い、どこぞのモンスターみたいな顔をしたパグだけど。
「あなたが……」
「はい。私、留守で読めない新聞なら、新聞を止めてくれるように販売所に電話した方がお金がかからないと言ったんですが、すぐ戻るからとのことで」
すぐ戻るということは、帰る前提があって外出をしているということだ。
「彼女の意志で外出したみたいですね」
「スマホの電源切って、どこに?」
あたし達は顔を見合わせ、途方に暮れた。
……なんだろう、本当にこの胸騒ぎ。
「衣里、本当に戻ってくるよね!?」
同じように嫌な予感がして駆けつけた杏奈は、泣きそうな顔であたしを見る。
「……戻ってこない予感がするのか?」
朱羽の声に、あたしは深く頷いた。
朱羽は目を細めながら衣里の黒いドアを見て考え込み、返事はなかった。彼もそう感じているのだろうか、なにかおかしいと。
「木島くん、昨日俺達がコンビニでティッシュを買っている間、真下さんが結城さんに休暇を願ったのを、なんで結城さんが受け入れたのか聞いてる?」
「聞いてないっす。真下さん結城さんと宮坂専務だけに話したようで、俺達には、休むからとしか言われてないっす」
あたしのようだ。理由を知っているのは、結城と専務だけなのか。

