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*。:゚+ 小鳥遊 医局長の結婚生活+゚*。:゚
第12章 パワー・ゲーム
―――翌年の夏(華、夏2歳)

「えっ?無理です。出来ません。」

冬は教授の前で慌てていた。春学期がもうすぐ終わろうとしていた5月に突然教授に呼ばれた。

「適任者がいないのよ。代理でも良いんだけど、もう私も定年退職だから…ね?だから夏はゆっくり休んで、秋から頑張って♪」

トレーシー教授はプレジデント・チェアーに深々と座り眼鏡を外し、こめかみに手を当てながら言った。教授が病気療養で早めに退職することになった。

「あなたが、現場が好きな事は、ドクター・スミスから聞いていてよく分かりますし、見てても分かります。あなたの様に、研究と現場での仕事がバランスよく出来る人は珍しいのよ。」


「私…准教授になったばかりですよ?それなのに教授なんて勤まりません。私よりも適任者がいるじゃないですか。」

…ますます現場や生徒指導から離れていく。

「他の講師からの信頼も厚いし、あなたなら安心して任せられるから。お願いね。」

トレーシー教授は有無を言わさなかった。


「良いんじゃない?折角だから。」

今泉は夕食の準備をしている冬の背中を優しく撫でた。

「論文と、データー集積、スケジュール調整、それから卒業式や入学式…そんなのばっかりだよ!しかも、准教授不在になるから、暫くは教授と准教授兼任だって。もう嫌になっちゃう。」

華も夏も魔の2歳児になっていた。今泉も麻酔科医として働き始めたが、日本に居た時よりも時間の融通が利いた、育児を手伝うため今泉は仕事をセーブしていたし、長期の休みも取れた。

「トーコさんならきっと出来るよ。何でも体験してみるのがモットーなんでしょう?」

今泉は冬の後ろから抱き付き、うなじにキスをした。

「ダディ…抱っこ。」「…抱っこ。」

冬と今泉が話しているとふたりとも足にしがみついてきた。

「トーコさんはご飯作ってるから、ちょっと待ってね。お父さんと遊ぼうね。」

今泉は二人を一緒に抱き上げて、リビングへと連れて行った。

「ねぇ、トーコさんの夏休み約2カ月でしょう?そうしたら日本へ帰ろうか?ガクさんには連絡しておくよ。」

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