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蜘蛛の巣
第4章 穏やかな日
「おかえりなさい」
「ただいま」
たった二日ぶりなのに、全く違って見える我が家
「なんか家がすごく小さく見えるよ」
華は笑いながら靴を脱ぎ、リビングへ向かう
「お父さん、ただいま」
「ああ、華。もう追い出されたのかと思ったぞ」
「やだなぁ、煉さんが気を効かせてくれただけだって」
「煉さん、か……そうか……。
楽しくやっているようだな」
一瞬、華の動きがぴたりと止まる
「……うん、皆すごくいい人たちだよ」
「そうか……」
父はそう呟くと立ち上がって自分の部屋へ入ってしまった
「お父さんね、華が帰ってくるって聞いてとっても嬉しそうな顔してたわ。やっぱり男性ばかりいる中に年頃の娘一人なんて心配なのね」
「うん……」
華は父の出ていったドアを見つめ、心の中で謝る
昨夜の、出来事をーーー
「でも華はそんなこと気にしなくていいのよ?」
少し沈んだ華を励ますように母親はわざと明るい声でそう言った
「せっかくの機会なんだから、本当に良いって思える人を見つけなさい!」
華はそんな母にただ笑って返す
そこまで自由な選択肢など許されてはいないことを、外の人間である母や真里枝は知らない
だがこの日、その根拠のない明るさによって華は救われたのだったーーー