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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。
そして温泉旅行も翌週に迫ったある日
談話室には珍しく華とその婿候補全員が揃っていた
「来週の旅行のことなんだけど」
まず結利が切り出す
「オレは例年通り行けないから」
「りょーかーいっ」
「えっ!?」
「やっぱそうだよねぇ」
ただ一人戸惑いの声を上げたのは、言わずもがな、華である
「行かないって……」
「そんながっかりすんなよ。温泉だとピアノの練習出来ないからさ。出来るだけ毎日やりたいから……ごめんな」
そう言いつつ自分の為に気を落とす彼女に結利は笑みを噛み殺すのに必死だった
「あごめん、僕も行けないわ」
「煉さん!? 言い出しっぺじゃないですか!」
「ごめんごめん」
「別にいいよ。だってレンおじさん来ると団体行動が乱れるんだもん。ずっと部屋でだらだらしてさ」
「おじさんだからね」
綾斗の言葉を軽く受け流し、煉は咳払いして続けた
「まぁぶっちゃけ、本当は行くことになってるんだ。つまり実家にも早霧にもこのことは秘密。うっかり橘さんに洩らしたりしないでよ、カーヤ?」
「なんでボク!?」
茅斗は名指しで忠告されて頬を膨らませる