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蜘蛛の巣
第16章 軋む
茅斗の部屋を出て−−−
その後どうしたのかよく覚えていない
誰かが扉をノックする音で初めて自分が部屋にいることに気が付いた
「……はい」
泣いてはいなかったけれどーーー放心した顔を見られたくなくて、華は扉を開けないままその音に応える
「ボク……綾斗だけど、カーヤの食器、片付けといたよ」
「あ……ありがとう」
そうか、私何も持たないでーーー
「……カーヤ、なんか言ってた?」
「ううん、何も? ボクが行った時はもう寝てたし。それより橘さんがカンカンに怒ってた」
「…すみませんって伝えといて……」
「大丈夫、色々誤魔化しといたから!」
姿を見せない華に何かを感じたのか綾斗が部屋に入ってくることはなかったが、代わりにいつも以上に明るい声で話してくれる
「そっか…………アーヤ、ありがとね」
「何が? ハナの為ならボク何だってするよ!」
「……」
その言葉は素直に嬉しい
けれど、彼にそう言わせる気持ちが華には怖かった
「私もう寝るね……おやすみ、アーヤ」
「うん、おやすみ」
ドア越しに挨拶を交わし、綾斗はその場を後にする