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蜘蛛の巣
第21章 更なる深みへ



「アーヤっ!」



鋭い叫び声と共に茅斗が兄に突進してゆく

そのまま、硬い拳が綾斗の頬に撃ち込まれた



「え、カーヤ!?」



結利が驚いて止めようとするが、茅斗はその手をなんなくすり抜ける



「……っ」



そしてもう一度殴ろうとして–––ゆっくりとその手を下ろした



「殴らないの?」



兄の眸〈メ〉が、恐ろしく冷たかったから。



「うん、殴れないよね。だって先に手を出したのはカーヤなんだから」



側で聞く結利には、“先に手を出した”という言葉の意味が今目の前で起こったことだと思うだろう

だが二人の中では、違う



「それでもあんな風に…あんな顔させるなんて……」

「何してるの?」



ちょうど外出先から帰った壮真が、玄関先での光景に目を見張っていた

倒れ込んだ綾斗と、その上に馬乗りになっている茅斗

四年も一緒にいるからこそ分かる

これはただの喧嘩ではない


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