この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蜘蛛の巣
第21章 更なる深みへ
「アーヤっ!」
鋭い叫び声と共に茅斗が兄に突進してゆく
そのまま、硬い拳が綾斗の頬に撃ち込まれた
「え、カーヤ!?」
結利が驚いて止めようとするが、茅斗はその手をなんなくすり抜ける
「……っ」
そしてもう一度殴ろうとして–––ゆっくりとその手を下ろした
「殴らないの?」
兄の眸〈メ〉が、恐ろしく冷たかったから。
「うん、殴れないよね。だって先に手を出したのはカーヤなんだから」
側で聞く結利には、“先に手を出した”という言葉の意味が今目の前で起こったことだと思うだろう
だが二人の中では、違う
「それでもあんな風に…あんな顔させるなんて……」
「何してるの?」
ちょうど外出先から帰った壮真が、玄関先での光景に目を見張っていた
倒れ込んだ綾斗と、その上に馬乗りになっている茅斗
四年も一緒にいるからこそ分かる
これはただの喧嘩ではない