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蜘蛛の巣
第22章 理由
「……おい」
ビクッ
朝食を取りに渡り廊下へと向かっていた華は、後ろから掛けられた低い声に立ち止まった
この邸に移ってから一週間経つが–––
「はい……」
未だにこの男の真意は掴めない
「今日は午後の講義がないんだろう。大学が終わったら正門前で待ってろ」
「え……」
「あ?」
有無は言わせないという態度に、華はただ黙って頷いた
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「……」
邸にしろ大学にしろ、広すぎるその敷地内で二人が偶然に会うことは滅多にない
つまりわざわざ呼び出すということは何か話があるのだろうが–––何故、よりにもよって大学なのか
華は隣に立つ遥を窺いながらも質問すら出来ずにいた
「……」
周りの目とこの沈黙が痛い
遥はそんな彼女にお構いなくずっとスマホを弄っている
…キッ
「遥様」
「遅い」
目の前に止まった見覚えのあるリムジンと、真っ黒な執事。