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蜘蛛の巣
第23章 淡々と、眈々と。
耳元で囁かれた低い、それでいて冷やかな煉の声に華は心がさざめき立つのを感じた
「ま、僕にそんな気は全くないから。
ごめんよ〜、他を当たってくださいな」
まるで二人して冗談を言っていたかのような雰囲気で手をパッと離され、支えを失った華はカクンとベンチに膝をつく
「……」
俯く彼女の頭を、煉は感情のない目で見つめ–––
ポン、と手を置いた
「…もっと適任者がいるでしょうに」
その呟きは華の耳に届いてはいないだろう
だが彼女が震える声で次に発したものこそ、その適任者の名前だった
「…壮真さん……」
「……」
「壮真さんは…どこですか……?」
問われて、煉はうーんとわざとらしく腕組みをしてみせる
「さっきカギとか全部持って出て行ったから、車に忘れ物でもして取りに行ってるんじゃない?」
答えた瞬間、華は踵を返し駐車場の方へと走り出していた