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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
それは、お前だから――そう思えるんじゃ、ないのか?
俺はきっと、背伸びを続けてせっせと小さな木の実を集めることだろう。得るものが小さいから、手を止めている暇もない。
そんな己の傍らより、いつしかその大木をも飛び越え、空高く舞い上がってゆく真の姿。俺は不意にそんな光景を、頭の中に思い描いていた。
その時のイメージは、鮮やかで眩しく――それでいて、残酷なもの。
「ハハ……」
「ああっ、馬鹿だと思ったんでしょ! なに、わけのわからないこと言ってんだ、コイツって」
思わず零した笑みに、真が激しく反応した。しかし――
「いや、別に真のことを笑ったわけじゃない……」
「え……?」
そう。俺が、笑ったのは矮小な自分自身だ。
それでも、俺は今こうして真に出会っている。それが、幸か不幸か、それはまだわからなくとも……。
だったら、俺は――どうしたい?
そう自問したことに、まだ答えなどなく。だが、何れ訪れる結末の形は、俺の想いによって変化するものではないように思えた。
そんなことは、初めからわかっている。それでも、何らかのきっかけを真に――俺が齎すことができるのならば。
果たして、その一歩となり得るのか。そこまで深く考えた訳でもなかった。
「着いたぞ」
とりあえず俺は、この日の目的の地に車を停めている。