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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
「よし――午後はドライブと洒落こむとしよう。何処か行きたい場所とか、あるか?」
真を車に乗せると、俺は柄でもないことを言ってる。
「え、いいの?」
「ああ、今日はそんな気分だろ。但し、あまり人目のない場所で、夕方までに戻れる範囲だぞ」
「アハハ! じゃあね――」
とりあえず、今の彼女は笑っていた。それは『天野ふらの』ではなく『真』としての笑顔だ。
だから、とすれば些か変とも思う。が、俺はもう少しの間、そんな彼女を見つめてみたいと感じていた。すなわちそれは、俺のエゴである。
それならば、仕方がないと諦めるしかなかった。俺が自らの意志でそうする以上は、その後にどんな想いに苛まれたとしても、それには耐えるしかない。
信号で停車すると、風に吹かれている横顔を俺はちらりと見た。
「なに、オジサン?」
「いや……別に」
目が合ったことだけに、ドキッとして言葉を濁す。
あーあ……これはいよいよ、ヤバいかな。
俺はそっと苦笑した。
平日の空いている道路は、彼方まで見渡せるよう。その真っ直ぐな道に向け、俺はアクセルを踏むとオンボロな車を走らせて行った。