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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
とある日曜日の午後の部屋には、晴天の強い陽射しが差し込んでいた。
職を失ってから初めての週末というは、既に曜日の感覚を失いつつある俺には何の感慨も齎そうとしない。それでも平日に比べたのならこうして、周囲の視線を気にすることなく呑気にベランダで布団を干せるだけ、まだましだ。
「ああ、もう――最悪!」
と耳にした声を、とりあえず一度、俺は聞き流した。
狭いベランダの縁に毛布等を並べる。真にベッドを譲りすっかり床で寝るのが当たり前になっていたが、夏場とはいえ流石に身体に良くない。腰に張りを覚えたことも手伝い、久しく収納してあった敷布団を引っ張り出し、それも干した。
さてと、次は洗濯物を――と思った時、また大声が喚く。
「オジサン、ちょっと来てよぉ!」
はあ、とため息を一つ。
俺は干そうとして手にした洗濯物を籠に戻すと、部屋に入り声のした方向に仕方なく向かい、そして面倒そうに訊ねた。
「どうかしたのか?」
俺が立つのは閉ざされた扉の前。そこはトイレである。