この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
その中で用を足している最中であろう、真は言った。
「なんか、急に電球が切れてるし」
部屋のトイレには換気口があるだけで窓はない。そういう事情なら昼間とはいえ、その個室は闇となる。
「わかったよ。スペアならある。終わったら、後で代えてやるから」
そんなことで大騒ぎしやがって。俺は呆れ顔を浮べ、やりかけの洗濯物のところに戻ろうとした。
だが――
「後じゃダメ。今、すぐに代えて!」
「何故だ?」
俺は足を止めると、当然の疑問を簡潔に口にする。
「だってさぁ……その……拭く時に、困るでしょ」
「はぁ……そんなもん。とりあえず適当に拭いとけば、いいだろうが」
「ええっ、やだ!」
「やだとか言われても……」
一体、真のヤツは俺にどうしろと言っている?
共に暮らし始めて、既に五日目。しかし、その天真が俺を振り回しゆくのは、相変わらずの光景になりつつあった。