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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
真がこの部屋に来てからというもの、入浴中に蜘蛛がいたと悲鳴を上げたり、朝いつまでも起き出さない真の毛布を剥ぎ取ると全裸だったり、等々。この手のお色気ハプニング(か?)は、列挙するに暇がなかった。
だがそれも「一宿一飯」などと口にしていた当初とは、若干ながら趣が異なるように思う。真のヤツは何というか、一種のレクリエーション的な感覚で単に、その度に本気で戸惑う俺を面白がり楽しんでいるようにも見えた。
いや、それならそれで問題がないとは、決して言うまい――が、それでも。
少なくとも、抱くとか抱かないとか、その様な男女の色情に展開する気配は微弱ではないか。彼女との間に一線を設けた(つもり、である)俺にしてみたら、それは良い傾向と言えた。
仮にそうだとしても、当然。肝心の俺が揺らいでしまえば、一気にその方向に傾くことは必定である。この微妙なバランスを保ってゆくのは、心身ともにかなり骨の折れることに違いはないのだ。
とりあえず、真の為に……俺は何を?
今は真が笑っていれば、それでいいと、思うことにしても。しかし、さてこの先は、と考えれば特に妙案もないのだが……。