この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ
したいように、か……。
思慮に浅いようにみえて、それは俺の頭の中で失われていた発想だ。会社を辞めたことも、色々な事情を耳にし迷っていることも。更に言及すれば、親父に逆らって家を出たことことですら。そう言われてみた時に俺がしたいようにしてきたことなんて、これまでの人生でどれほどあったというのだろう。
だが、それは同時に俺と真の生き方の違いでもあるのだ。否、生き方なんて格好の良い言い回しは、真にならばいざ知らず俺には相応しくないのだろうな……。
そんな風に考え苦笑を浮かべた俺の顔を、真が不思議そうに眺めていた。
「アレ――私、なんか変なこと言った?」
「いや、真は正しい。だが、この件はやはり俺の問題みたいだ。まあ、そんなこと口にするまでもないことだったな……」
「オジサン……?」
少し心配そうな顔の真に、今度はちゃんと微笑んでみせる。
「ちょっと、電話してくるよ」
「誰に?」
「全ての事情を知ってそうな奴、に」
そして、そう告げた俺は携帯を手に席を立った。