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ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ

 したいように、か……。


 思慮に浅いようにみえて、それは俺の頭の中で失われていた発想だ。会社を辞めたことも、色々な事情を耳にし迷っていることも。更に言及すれば、親父に逆らって家を出たことことですら。そう言われてみた時に俺がしたいようにしてきたことなんて、これまでの人生でどれほどあったというのだろう。

 だが、それは同時に俺と真の生き方の違いでもあるのだ。否、生き方なんて格好の良い言い回しは、真にならばいざ知らず俺には相応しくないのだろうな……。

 そんな風に考え苦笑を浮かべた俺の顔を、真が不思議そうに眺めていた。


「アレ――私、なんか変なこと言った?」


「いや、真は正しい。だが、この件はやはり俺の問題みたいだ。まあ、そんなこと口にするまでもないことだったな……」


「オジサン……?」


 少し心配そうな顔の真に、今度はちゃんと微笑んでみせる。


「ちょっと、電話してくるよ」


「誰に?」


「全ての事情を知ってそうな奴、に」


 そして、そう告げた俺は携帯を手に席を立った。

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