この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ
暫く宥めて、落ち着かせる。そして俺が改めて一連の事情を簡潔に話すと、真はこう訊ねていた。
「――で、オジサンは、どうするの?」
「どうするって、どうもできねえよ。俺は既に、退職届を提出してる身だぞ」
「だけど、戻ろうと思えば戻れそうなんでしょ?」
「うーん……それが、どうにも……」
納得できない、と感じ。俺は腕組みをして、考え込む。
確かに無職となって清々した気分だとは言わないが、少なくとも会社に嫌気が差していたのもまた本心だ。それを今更、復帰の可能性を示唆された処で、俺にどうしろと言うのか。斎藤さんたちの気持ちは、わからないでもないが……。
そもそも当の俺には、その件について会社から何ら打診されてもいないのだ。にも拘わらず、外堀を埋めるような今の展開が、どうにも解せない。
どうも一人で頭を混乱させた俺は、ふと真にこう訊いてみた。
「真は、どうしたらいいと思う?」
「そんなの、オジサンのしたいようにしなよ」
微笑した真は、あっさりとそう答えている。