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第6章 急かされて旅立つ

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　時刻としては、その日が終わりかけている――夜中の午後１１時４７分。

　俺は２４時間営業のセルフのスタンドで、愛車（というまでの思い入れはないが）の軽自動車にガソリンを満タンに給油していた。

　作業を完了し運転席に乗り込むと、助手席の真が呆れ加減でこんな風に口にするのを耳にしている。


「けどさぁ。いくらなんでも普通、こんな夜中に旅立つぅ？　もっと何処に行くとか、計画を立てたりとかぁ。色々と考えてからの方が、いいんじゃないのぉ」


　幾分、間延びした口調は、眠気に襲われているからか。俺はそんな真に笑いかけ、この様に返すのだ。


「真でも、そんな些細なこと気にすることがあるのか？　行き当たりばったりなのは、寧ろお前の流儀に合わせたつもりだがな」


　それを聞くと、真も愉しげに「にっ」と笑みを零す。


「オジサンにしては、上等じゃん。では、真夜中の逃避行に――出発！」


　真のその号令を合図として、俺はアクセルを踏み車を走らせ始めた。


　宛てもなく、目的も定かでない――そんな旅に。

　だが年甲斐もなく、どこかわくわくしている――自分がいた。