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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
様々あったようで、実はまだ何一つ定かでないまま。無鉄砲と言われても抗弁できない、そんな旅立ちを決意することとなった――俺と真。
暫く車を走らせた時、真は何気にこう訊ねる。
「今、方向としては、どっち?」
「まあ、北だな」
「とりあえず、何処に向かうの?」
「うーん……そうだなあ。こんな場合は、やっぱ日本海じゃないのか」
「は? なにそれ」
「街を追われた若い二人は、人知れず日本海を目指すものと相場が決まっている。演歌の歌詞とかに、ありそうだろ?」
「知らないし。つーか、どさくさに紛れて、若い二人とか。その発想も含めて、オジサンってやっぱ昭和の人だわ」
「昭和の人って、なんだよ! 確かに、昭和生まれだけども。俺だってこの21世紀を、ハツラツと生きているわっ!」
「ホラ、そーゆうとこ。ハツラツとか――イチイチ、チョイスする言葉が古臭いよねー」
「くっ……!」
俺としては清水の舞台から飛び下りる覚悟で、この旅に赴いているというのに。そののっけから、随分と人のことこき下ろしてくれるんだね、君は……。
おまけに――
「ふぁあ……車に乗ってたら、急に眠くなっちゃった。もう遅いし、寝ててもいいよね?」
こ、この女……俺だって、そろそろ眠いわい。助手席の奴は、普通ドライバーを気遣うものだろうが。もっと会話を振るとか――あ、いや。さっきみたいな会話なら、寧ろ寝ててもらったほうがいいのか……。
「わかったよ。好きなだけ、寝てろ」
呆れ半分に、俺が言うと――
「うん、そうする。でも、その前に――」
真はそう言いながら、後部座席のバッグから何やら取り出していた。
「コレ、かけてよ」
「なんだ。持って来たのか?」
真が手にしていたのは、部屋にあった古いCD。若い頃の俺が傾倒していた、ロックバンドのアルバムであった。