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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
その伝説的バンドの楽曲には、それまでにも真が興味を示していた。
俺はカーオーディオを低目のボリュームに設定し、そのCDをかける。
真はシートを倒しそっと目を瞑ると、子守唄代わりにその曲を耳にしていたようだった。
そのまま暫くして、そのアルバムも終盤に差し掛かっていた頃。
「これ……なんて曲?」
不意に真から、そう問われた。
「起きてたのか?」
俺が見ると――
「なんか、妙に染みてきてる……特に、詩が……ね」
真は瞳を閉じたまま、まるで寝言のようにそう言った。
それに対し、その曲名を告げた俺は――少し迷った後に、こんな注釈を付け加えた。
「この曲は――バンドのヴォーカルが、亡き祖母の為に書き下ろしたものだってさ」
決して直接的な表現ではないが、確かにそれは別れを唄った一曲である。
すると、ややあって――
「そっか。どうりで、ね……」
真は消え入りそうな小声で、そう言った。