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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
義母である事務所代表との確執――そんなことが、ふと俺の脳裏に浮かぶ。だが、それも浅はかに尽きた。
「おばあちゃんが、私には伝えないように言ったの。唄ってる真の、邪魔はしたくないから……って」
そして、真が本当に悔いていたのは、やはり――
「でも、その時の私が唄っていたのは……やっぱり、ニセモノの唄、だから……私は、それが悔しくて……今だって…………悔しいよ」
「真……」
その頬に涙を伝わせながら、真は抱えていた想いを吐き出していった。
「私は、おばあちゃんに……胸を張ることができない。これが私の唄だって……このままじゃ、これからも……」
そう話し終えた時。8分にも及ぶ長い曲は、車内で静かな余韻と変わる。
すると、真は――
「これは、きっと……曲を書いている、この人の……ホントの唄、だよね………………」
最後にそう告げると、今度は本当に眠ったみたいだった。