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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
話しながらも、半分は夢の中にいるように。真はポツリポツリと、内に秘めていた想いを明かしていった。
「私の、おばあちゃん……今年の春に、死んじゃったんだ」
俺の祖母の墓参りの時に、聞いていた。その「おばあちゃん」は真の名付け親であり、彼女が唄うことを生業とする、そのきっかけとなった人だった。
「その時、私にはライブがあって……おばあちゃんと……お別れ、できなかったの」
「……」
俺は何も言わずに、その話を聞く。
それに似たようなケースは、芸能人なんかの話でたまに耳にすることがる。舞台だったりライブだったり、芸事に殉じる者は例え肉親であっても、その死に目に遭えないなんて話を……。
危篤であった祖母に、会えぬままに……。そこまでを聞いていた俺は、真がそこに悔いを残しているのだと、そう考えていた。
だが、どうやら――それだけではない。
「私が、その報せを受けたのは……もう、お葬式の後のこと」