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第1章 一人と一人

「――ねえ、聞いてるのぉ？」


　幾分、甘ったるい言葉が耳を擽る。亜樹はソファーに座る俺の肩にしな垂れるようにして、その肉感的な身体をピタリと寄せた。


「いや……悪い」


　俺はそう答えながら、右手で軽く亜樹をいなしている。


　ここは亜樹の部屋。俺たちが付き合って、もうかれこれ半年になる――か。


「なぁに、元気ないんだねー」


「まあ……だろう、な」


　彼女の甘い色香に惑わされることを避けると、俺は正直な気持ちの一端を吐露した。