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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
その後も、何らかの箍が外れたように、俺は真と水辺の攻防を続けた。
互いに手足で、水しぶきを掛け合い――笑う。
今時、ベタな恋愛ドラマでもまずお目にかからない場面が、そこには展開されていた。しかも一方は、かなりいい歳のオッサンである。
「キャハハ!」
だが、戯れ笑う真の姿は、キラキラと夕陽に映えていたから。ふと、俺は気づくのだ。
今日一日、水族館でもどこでも、それは同じだった。俺は常に、何よりも真を見ていたのだ、と。
真が俺の隣りに居てくれるという幸福。俺はそれを否定することを止めている。後先を考える暇もないくらいに、真の魅力はまるで容赦することがないのだ。
だから、俺は――。
「オジサンたち……なに、してるの?」
「えっ……?」
それは、釣竿を肩に担いだ地元の少年。小学生高学年くらいの年頃の彼は、いつの間にやら砂浜に立つと、呆然と俺たち二人の奇行を眺めて訊ねる。
その視線にハッと我に返った俺は、ずぶ濡れとなった己の姿を顔を真っ赤にして恥じた。