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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
大浴場から戻り部屋に入ると、室内は思いの外、静かだった。
「真――?」
と呼びかけた声に、それに応じたかの如く心地よさそうな寝息が耳に届く。
「フフ――全く」
部屋に二つあるベッドの片方に、浴衣をはだけさせつつ大の字に寝入っている真。その姿を見下ろしながら、俺はふと緩和して笑った。
「ホント――欲望に、正直なヤツだよ」
天真爛漫――とも少し違っている。よく食べ、よく遊び、よく寝て、そしてよく笑う。そんな真の寝顔を見ている自分が、とても不思議だと感じている。
だが、無邪気な素顔の奥には、彼女なりの葛藤があった。その最中にあるからこそ、真は今、俺のような男と一緒にいて――。
モヤモヤとした全てを振り払った時に、真はきっと、もっと――輝くのだろう。
俺はその姿が、いつか見たくて――でも、本心では見たくない――の、かもしれない。
「変、だな……」
酔うほど酒を呑んだ訳でもないのに、妙に感傷的になってしまう自分に戸惑っていた。