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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
真の言ったことは、半分は当たっているのだろう。
ただし当然ながら『難しいお年頃』ではなくて――何とも『ややこしい歳の頃』といった感じではあるが……。
実際、今――真のふくよかな体温に右手を包まれながら、それであるのに俺の頭の中は面倒な思考で頻りにグルグルと回って止まない。
現在無職であった己を自虐しながらも、会社に未練がなかったと言ったら嘘になることは自覚していた。結局、戻ることなくその立場を確定させれば、不安な想いに苛まれていることも認める。更に斎藤さんらの期待にも応えられないことには、やはりやるせない気分にならざるを得なかった。
それでも――先程の電話のうっぷんが、今の俺を真へと向かわせているなんて、そんな風には絶対に考えたくはない。
太田が最後に含んだことへの懸念は、確かにあるのだろう。だがそれを振り払おうとしたからこそ、俺は真を連れこんな処にまで辿り着いているのだ。
そう既に、俺は何度も――この情景を望んでいた筈……。
「……!」
ふくよかなふくらみから右手を引くと、真は少しだけその瞳を揺らす。
ベッドから立ち上がりそれに背を向けると、俺は壁に供え着けられたキーを捻り部屋の照明を落した。