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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
さて、太田のヤツ――幾らで、このネタを売ってる?
との疑問が頭に浮かぶが、とりあえず今はどうでもよかった。
問題はその取引相手が、週刊誌等のマスコミではなく。言わば本丸というべき、真の所属事務所であるという点。その事実を、どう踏まえるのか……。
それを特ダネとして騒ぎ立てたいであろう週刊誌やテレビ局に比べれば、少なくとも『所属事務所代表』である彼女は内々に事態を治めたい立場の筈だ。その一点に於いては、今後の『天野ふらの』の名に、妙な傷を負わせる懸念は生じてはいない。
が……。
『――とある方から、私共に寄せられた情報。それによれば、ふらのは現在、新井様と行動を共にしているとのこと』
「……」
『それに誤りは、御座いませんか?』
心して答えなければ、ならなかった。
電話の向こう側の相手にしてみたのなら、真の所在を確かめようとすると同時に俺がどのような男であるのか推し量りたいとも考えている。その意図が慎重な言葉の一音一音に、透けて見えるようだった。
何気に、その様な空気を感じ――
「ええ……故あって彼女のことは、私の方で保護させていただきました」
俄かにざわめく心を押さえながら、俺は静かにそう告げる。