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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
結局、朝には出なかった覚えのない番号からの電話。同番号よりの二度目の着信は、真がシャワーを浴びている最中というタイミングにて――。
「――はい」
俺は数回目のコールで、今度は早々にそれに応じた。新井との姓は名乗らない。まだ知らぬ相手への警戒を、怠ってはならなかった。
しかし――
『突然のお電話にて、大変恐縮いたしております。こちらは新井裕司様の携帯で、お間違い御座いませんでしょうか?』
それは、落ち着いた女の声。そして少なくとも相手は、これが俺の携帯番号であることを承知していた。
「そう、ですが――そちらは?」
『重ねて、失礼いたしました。私――AFM企画・代表の上野と申します』
「……!」
この時点で、ある程度の予感は生じてはいるが――。
「えーえふ……企画……?」
俺は考えを巡らせつつ、わざと惚けたように言う。
すると――
『天野ふらの、所属の――芸能プロダクションになります』
感情を抑えるように低い声で、女は明確な口調で――そう言った。