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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
「貴方はもう、すっかり真の味方のようですし……。私が話すことなんて、全て言い訳じみて聴こえてしまうのでしょうね。実際、貴方の言う『野心』も、私の中に無かったとは言えませんから」
上野さんは、テーブルに視線を落しながら、沈んだ様に話した。
その姿を前に――。
「見ての通り、俺の方も大概に大人ですからね。例えば、対立する二人がいた場合に――どちらか片方の話だけを盾に、物事を見通そうなんて考えていませんよ。できれば双方の話を聞いた上で、その中間に漂うであろう真実を想像してみるくらいは――」
「対立する二人とは――私と真?」
「あ、いやっ――あくまで、例え話で」
「いいんです。今回の一件に於いても、それが原因であるように報じられていることも承知してます。何より、彼女自身が私のことを良く思っていないことも……」
俺はその寂しげな顔に、何か秘められた想いを察した。
「なにか行き違いがあれば、話してみませんか。まあ、俺が真の味方であることは、変更できませんけども」
「フフ――」
と、不意に笑われ。
「……?」
俺はそんな彼女を、意外そうに眺める。
「失礼――どうやら貴方は、単にあの子に懐柔されているのとは違うようです」
表情を和らげ、上野さんは真も知らないその想いを語り始めた。