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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
当面の話を終え。俺はバツが悪そうに頭を掻くと、こう切り出す。
「お話の方は、大体わかりました。だがそうすると、貴女に詫びを入れなければなりませんね」
「詫びる、とは?」
「真を金蔓にしてる――なんて。良く知りもしないで口にしてしまったこと、本当に申し訳ない」
挑発の意があったとは、言い訳にもなるまい……。
俺はテーブルに両手を着くと、深々と頭を垂れた。
「そんな、困ります。失礼ならば、私の方にだって――」
「いえ、貴女が真のことを心配するのは当然。それとこれとでは、話が違いますから」
「ともかく――頭をお上げになって」
ふう、と小さなため息を耳にし、俺は体勢を戻す。
すると、彼女は俺の顔を眺め、感慨を滲ませるように言った。
「とても、不思議なんです。こんな話、誰にもしたことなかったのに……」
「はあ……それは、どうも」
何が「どうも」かは知らないが、とりあえずそう合わせる。
「こんなこと言って気を悪くしたのなら、ごめんなさい。新井さんの雰囲気は、何処となく――あの人に、似てる」
「あの人?」
「――真の父親です。あの子が新井さんを慕ったのも、同じものを感じたからかもしれませんね」
上野さんはそう言って、とてもしとやかに微笑んでいた。
が、そう聞いてしまった俺の脳裏には――真との様々な情景が、浮かぶことになり。その結果――
ホ、ホントに――すみませんでしたぁ!
俺は内心、床に額を擦りつけ土下座したい気分になるのだった。