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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
「それは、大丈夫でしょ」
「え?」
「アイツだって、聞く耳を持たない訳じゃない。酷くマイペースですがね。それと、人を見る目は確かだと――そうは思いませんか?」
これは口にしていながら、気恥ずかしくなるくらい手前味噌なセリフだった。自意識が炸裂気味であり、本来の俺の流儀ではなかった。
それを臆面も見せずに言ったのは、彼女の不安を少しでも取り除く為であり――。
「ええ、本当に」
上野さんも(一応)納得してくれたようなので、まあ良しとしておこうか……。
ともかくこれで、少しは真を取り巻く環境も変わるのだろう。否、ほんの些細なことであれ、変わる切っ掛けにはなる筈だ。そして、もちろんそれは事務所の代表であり義母でもある上野さんの役割である。
だとすれば、俺の果たすべき役割とは――。
「さて、じゃあ行くか」
「うん。そうだね」
真を伴い歩きながら。
さて、何処へ――?
と、俺はそっと自問してみた。