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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
と、遠ざかって久しい自然の在りように、感動を覚えたのも束の間のこと。
「オジサーン! 遅ーいっ!」
それは、遥か先から真が張り上げた声。一向に追いつかぬ俺を急かすように、両手を大きく靡かせ「おいで、おいで」と手招きしている。
方や、俺はと言えば――。
「ちょ、ちょっとだけ……休憩ぇ!」
はあ、はあと息を切らせつつ、手ごろな岩を見つけたのを幸いと、そこへ腰を下ろした。
その刹那、遠くではあっても、真が浮かべたであろう呆れ顔がはっきりと見えた気がした。
「もうっ、またなのぉ! 日が暮れちゃうんだからー!」
そう言うなって……。足手まといで、すまないけども。いや、ホントに……。既に大声を張り上げようとも、していなかった。
きっと、こうなるって誰しも思っていたのではないか? いやぁ、だからこそ、このベタ過ぎる展開だけは避けたかったのであるが。そうは言っても、この中年の身体の体力低下には抗えないのだ。
よし、来週から運動でも始めよう。あ、その前に職探しか……。
「……」
大自然の雄大さに比して、俺は己の矮小さを痛感しているのだった。