この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
「そんな処で、なにを……?」
岩の下より、その姿を見守る。
涼やかな風に流れる霧の最中で、真がポツンと岩の上に立っていた。
まだ雨は落ちて来ないが、視界を遮る霧は頬を俄かに濡らしてゆくかのようで。
俺は肩にかけていたバッグからレインコートを取り出し、真に差し出して言う。
「とりあえず、コレを着――」
「待って!」
「――!?」
強い言葉で遮られ、止む無く俺はコートを携えた手を下げた。
「もう少しだけ――待ってて」
穏やかな言葉で言い直すと、真はそのままスッと瞳を閉ざす――。
真……?
それは、どれ位の時間だったろう。
目を瞑ったまま岩上に直立する真の姿を、眺めていたのは――。
そう思うに至り、程無くした時――だった。