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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々

 真のことはとりあえず、いいとしようか。いや、どう見ても良くはなさそうであるが、そう思わないと、気が滅入るばかりだった。実際に真は、これから顔を合わせる面々とは、全くの無関係であるのだし……。

 顔を合わせる面々――と、表した当たりが、先の電話で俺が頭を抱えた一因となっているのだが。調度それを憂鬱に思ってた時に、真にこう訊ねられた。


「このお店で、待ってるんだよね――オジサンのお父さん」


「あ、いや……そうなんだが。どうも待ってるのは、親父だけじゃないらしくてな……」


「そっか。じゃあ、お母さんも?」


「ああ――それプラス、兄弟が二人と――何故だか知らないが、その嫁たちまで追加で」


「へえ。じゃあ、一族が勢揃いだね」


 真は言うと他人事みたいに、ニッコリと笑った。まあ、他人事だけども……。

 一方でその状況を詳らかにしている俺の方は、決して軽くない頭痛に襲われ始めていた。


「全く……悪趣味な話だぜ」


「なんで? 皆、オジサンに会いたくて集まってるんじゃないの?」


「ある意味では、そうだ。家を飛び出た男の末路――その没落振りでも、見学しに来てるんだろ」


「え、まさかぁ」


 そう言った笑いかけた真に、俺が引きつった笑顔を帰す。すると――


「え、マジで――そんな感じの、人たち?」


「まあ、な……」


 一定の理解を得て、コクッと頷いた。

 この高級料亭で待つ、とある一族の面々。その見えないプレッシャーを感じながら――


「ああ、畜生――行くか」


 俺はそう吐き出すように言って、重い足を一歩づつ踏み出して行く。
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