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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々

※ ※
俺の実家(? なにせ、二十年とかく帰ってないもので)は、俺の住むアパートから車で一時間ほどの距離。間に小さな町を挟んで、その先の市内であるのだが――。
「ここって――?」
車を降りて、真が不思議そうにそう口にしたのも、無理はなかった。
「オジサンの家――じゃあ、ないよね?」
その言葉通り、そこはどう見ても個人の住居ではなく――というか『料亭』と記された看板が丁寧に門の横に出ている。
「なんか――一席、設けられてしまってな……」
その料亭は地元では割と名のある店で、俺も一応は認識しているのだが、何せ無駄に敷居の高いことから実際に訪れるのは、今回が初めてだった。
来ては見たが、流石に場違い……だよな?
思いつつ自分はともかくとして、俺は隣に立つ真の姿を改めて眺めた。
「ん、なに?」
俺の視線に、そう小首を傾げた真自身は、まるで臆した様子はない。しかしながら、その服装はあまりにアンバランスなものだった。
髪を上げ帽子を被せ、更に眼鏡とマスクを着用。服装は全体的にダボダボにして、身体のラインをぼやかしている。ボーイッシュとかではなく、男か女かわからないようにしたい意図が滲むが、はっきり言ってそれは望みすぎであり、逆に只々、妙な雰囲気を醸し目立っているだけのような気もしている。
まあ、それも万一にも身バレすまいと、俺が指示したことであったが。品の良い料亭の構えを前にしてしまえば、その違和感は否応なく際立っていた。

